海外赴任と聞くと、キャリアアップに憧れの駐在妻や子供がグローバルに育ってくれるかも!と期待に胸躍ったりしませんか?
でも実際に決まった場合は、ただ夢を見るだけにはいきません。
どこの国に、どれくらいの期間赴任するのか、それによって様々な準備が必要になります。
そして単身であれば、自分の住民票を国内に残すことにメリットはあるのかなども重要です。
さらに家族がいる場合は、もっと考えなくてはいけません。
家族の形も様々です。
例えば
- 子供の有無
- 子供の年齢や状況(受験前など)
- 帯同する配偶者の仕事の有無など。。。
家族形態や家族それぞれの思いによって、単身赴任か家族帯同か、もしくは遅れて海外移住するかを選択しなければなりません。
さらに子供がいる家庭の場合、今までもらっていた児童手当はどうなるのでしょうか?
こういった疑問がいっぱい出てきます。
この記事では、家族は皆一緒に帯同した方がいいのか。
その場合、全員分の住民票を抜いたほうがいいのか、もしくは残したほうがいいのかといった自治体からの補助や控除も含めメリットデメリットを紹介していきます。
以前、下記の記事で、単身の海外赴任の際の住民票について解説しました。
ぜひ、こちらもチェックしてみて下さい。
目次
突然の海外赴任辞令で、迫られる家族の決断

海外赴任がある会社だとは知っていたけど、自分達家族とは無縁だと思っていた方。
または、配偶者が以前から海外赴任に興味を持っているのは知っていたけれど、こんなに突然に事例が下りるものなのか!?など、寝耳に水といった形で事例を受ける方も少なくないかもしれませんね。
そこで困っていても、時間は止まってくれません。
家族も帯同する場合は、赴任する本人だけではなく家族も短い時間の中で様々な準備をする必要があります。
海外転勤事例が出る時期と赴任期間について

こちらは、2004年の調査と少し情報が古いものにはなりますが、労働政策研究・研修機構(JILPT)による現地での職位別の海外赴任の内示の時期をまとめた表です。
2~3ヵ月前というのが平均のようですが、内示時期が1か月~2か月前という所もかなり多いのがわかります。
読者様の勤めてらっしゃる企業によって一概には言えませんが、転勤辞令は直前に出ると覚悟しておいた方がよさそうですね。
そして、こちらは現地での職位別の派遣期間です。

1 回の転勤における赴任期間の平均は、どの職位も4年ですが、割合としては3~4年程度がもっとも高く、次いで5~6年程度も高くなっています。
企業側から提示された赴任期間にもよりますが、家族を帯同するか、もしくは単身赴任を選ぶかは大きな問題ですよね。
しかし、上記の表でもお分かりいただける通り、限られた準備期間において長々と悩んでいる時間はありません。
そこで重要になってくるものの1つが社会保障です。
海外赴任で考えたい社会保障、どうする住民票

海外赴任先でも日本の社会保障を受けられるかどうかは、住民票を残すか海外転出届を提出し住民票を抜くかの問題になってきます。
住民票とは
日本において市町村と特別区(以下「市区町村」という)が住民基本台帳法に基づき作成し住民に関する記録を行う公簿の名称で、同法に規定される住民基本台帳を構成するもの。
市区町村によって個人単位もしくは世帯単位で作成され、個人単位で作成されたものは世帯ごとにまとめられる。
「住民」とは、「その市区町村の区域内に、その年の1月1日に住所を定めている者」のこと。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
海外転出届とは
海外に移住、または長期滞在(一年以上の海外転勤、出張、旅行)する際に提出する書類。
海外転出届を提出すると同時に、住民票も転出することになります。
届が受理されると、住民台帳から名前が消され、自動的に選挙人名簿からも名前が削除されます。
*海外転出届に関しては、法的に明確な規定がされておらず、各役所によって対応が異なります。
1年以内の転勤であれば、住民票について特に手続きをする必要はありません。
ただし、海外転勤を機に自宅の賃貸契約を解除する場合は、実家の市区町村などに住民票を異動させる必要があります。


子供手当もその一つ!一緒に考えていきましょう!
住民票を抜いた場合に起きること~メリット編~
ここでは子供がいる家庭で家族全員が帯同するケースで、全員分の住民票を抜いた場合を想定して考えてみたいと思います。
まず、支払い義務がなくなるものが以下の通りです。
- 住民税
- 国民年金保険料
- 国民健康保険料
①住民税
こちらの注意しなくてはならない点は、海外赴任された場合でも同じ年の1月1日時点で日本にいれば、滞在期間分の請求が翌年に来ます。
②国民年金保険料
住民票を抜いた場合でも任意で加入を継続することができます。
将来的に受給額が減ってしまう場合もありますので、よく考えたいところです。
③国民健康保険料
国民年金とは異なり、任意で加入を継続することは出来ません。
民間の海外保険に加入して現地での医療は、民間保険でカバーしましょう。
住民票を抜いた場合に起きること~デメリット編~
海外転出届を提出し、住民票を抜くという事は日本から住民登録がなくなることになります。
住民登録がないのですから、各種控除やサービス、手当などの受給資格を失います。
例えば先程、国民健康保険への加入ができなくなるとお伝えしました。
そうなると、海外滞在中や一時帰国中に怪我や病気になった場合は、治療や通院の費用は全額自己負担になります。
また、転職の場合は前年の所得額で課税されるので、転職先で収入が少ないと支払いが困難になる場合もあります。
経済面を考慮すると、出費を抑えることができるので住民票を抜く方が得策と言えますが、各自の状況に合わせての検討が必要です。
この他にも、まだまだあります。
- 児童手当(子ども手当)
- 市町村の補助による子供の予防接種
- 妊婦健診の補助(100%自己負担に)
- 乳幼児医療証の交付(医療費の助成)
- 自治体の補助による定期健康診断
- 住宅ローン控除
- 日本の選挙権
国や地方自治体から出ていた補助金や控除を失うので、特に子供のいる世帯は大きな変化になるかもしれません。
この他にも、住民登録がなくなるために出来なくなることがあります。
- 住民票・印鑑証明書の取得
- 銀行口座の新規開設
- クレジットカードの新規発行
- 実印と印鑑証明書の使用
こちらは、事前に準備や申し込みをしておけばクリアできる問題ではあります。
では、海外転出届を出さずに住民票を残した場合は、どうでしょう。
海外赴任中、住民票を残すとどうなる?

海外転出届を提出せずに住民票を残しておくという事は、各種の支払いが継続することになります。
最低限、必ず支払うべきものが下記の通りです。
- 住民税
- 国民年金保険料
- 国民健康保険料
これらを支払い続けることで、一時帰国中に怪我や病気になった場合も負担が軽減されます。
そして、将来の国民年金の受取額も減額されません。
また、今まで住んでいた場所に住民票がある場合は、郵送物はそのまま配達されてしまいます。
郵便の転送手続きは、実家などに変更しておきましょう。
住民票も健康保険証や免許証の住所も書き換えておけば、証明もでき郵便物も間違いなく実家に届きますよ。
もしかしたら独身や夫婦2人だけの場合は、住民票を残すことに特別大きなメリットはないかもしれません。
ただ子供がいる家庭の場合は、児童手当や子供向けの福祉サービスなどもあり事情が変わってきます。
家族が帯同するからといって、必ず家族全員が同じ手続きをしなければいけないわけではありません。
夫が海外赴任の辞令を受けた場合を想定してみました。
子供手当や各種子供向けサービスを日本で受けたい場合
日本国内に妻と子供を残し単身赴任を選んだ場合は、シンプルですね。
夫の住民票を抜いたとしても受給者変更手続きを行い、妻が新しい受給者として児童手当を受給することができます。
支給対象者 : 日本国内に住民登録がある、児童の養育者(その児童と一定の生計関係にある父又は母などのうち、生計を維持する程度の高い方)
支給対象児童:日本国内に住んでいる中学校修了前までの児童(日本国内に住民登録をしていて、実態として日本国内で居住し生活をしている児童)
- 受給者の前年の所得によりますが、対象児童は中学校修了まで1人につき月額1万円~1万5千円を支給
- 所得制限限度額以上の受給者には、特例給付として1人につき月額5千円を支給。
- 毎年6月(2月~5月分)、10月(6月~9月分)、2月(10月~1月分)に支給
*留学のために海外に住んでいて一定の要件を満たす場合は支給対象になる場合があります
引用:内閣府
また、妻が専業主婦で海外赴任先に家族で帯同して子供が日本に住んでいない場合でも、妻と子供の住民票だけ実家に残すという方もいらっしゃいます。
*住民票を残したままでも、支給の対象外になる場合もあるそうです。
妻と子供の住民票を残すメリットは、下記の4点です。
- 自治体の補助による子供の予防接種
- 乳幼児医療証の交付
- 児童手当の受給
- 市町村負担での妊婦検診
これらの補助を受けられるので、幼い子供のいる家庭や出産予定のある方は特によく考えたいですね。
また、家族で海外赴任先に帯同して子供が日本に住んでいない場合、基本的には児童手当は支給されません。
しかし、子供が外国の学校に留学していると認められた場合は、支給されるそうです。
- 日本国内に住所を所有しなくなった前日までに日本国内に継続して日本国内に住3年を超えて住所を所有していたこと
- 教育を目的として海外に居住し、父母(未成年後見人がいる場合はその未成年後見人)と同居していないこと
- 日本国内に住所を有しなくなった日から3年以内であること
※ その他、短期間留学していて日本に帰国し、再び3年以内に留学する場合などは、上記①の要件を満たしていなくても、手当を受け取れる場合があります。
引用:内閣府
児童手当は市区町村単位での対応となっています。
きちんとした手続きをしないと不正受給として発覚後に返還を求められたり、悪質だと判断されたときは刑事罰に問われる場合もあります。
海外移住の事実があったときは必ず申告が必要になります。
詳しくは、お住まいの自治体の福祉課へ問い合わせてみて下さい。
海外赴任先に家族を連れていくべき?その他3つの判断ポイント

慣れない土地での生活は、暮らすだけでも不安やストレスが貯まりますよね。
それが海外ともなると、より大きくなります。
赴任者本人としては、家族に帯同してもらいたいのが本音かもしれません。
しかし、家族にもそれぞれの生活があります。
そこで、家族を帯同するか話し合う時の自治体からの福祉以外の3つのポイントを紹介します。
配偶者の仕事の有無
配偶者が仕事をしている場合は、すぐに辞められるか辞められないかで決めるのも一つです。
様々な社会情勢の変化により企業の制度も変わりつつある昨今、配偶者帯同休暇や再雇用制度を設ける企業、そして帯同先でのリモートワークを認める企業も出てきているそうです。
配偶者の海外赴任が決まったら、ご自身の勤める会社の人事部に相談するのもいいかもしれません。
海外赴任先の生活環境・治安
赴任先の生活環境や治安を調べて、家族を連れていくか決めるのも大切です。
国によっては、治安が悪く、女性や子どもが犯罪に巻き込まれる心配があります。
また日本とは全く違う気候や環境の国では、体調を崩したりストレスを感じたりしてしまう可能性があります。
日本在外企業協会のHPで、地震などの災害、そしてテロや感染症に関する情報を閲覧してみてください。
子供の年齢
家族の中でも特に子供を連れて行くかどうかは、年齢で決めている人が多いそうです。
一度、赴任先に行けば、おおよそ3年~5年は戻ってこられません。
もし帯同しなかった場合、幼い子供のいる家庭は保育園の通園の送迎など1人では大きな負担になる場合もあります。
そして、年齢によっては、進学や受験といった問題も出てくるかと思います。
赴任先の日本人学校で過ごすか、子供の希望する進学先があるのかなど、しっかりと話し合うことをお勧めします。
理想になるかもしれませんが、家族全員が納得する形で乗り切ってくださいね。
私の周りで海外赴任された方は、家族で赴任地に行かれる方が多かったです。
転勤先で楽しくたくましく過ごされていました。
そして帰国後は、お子さんたち皆グローバルに成長、活躍されています。


住民票・児童手当の各種手続きについて

実際に手続きをされる場合は、事前にお住いの自治体窓口へ問い合わせてみて下さい。
こちらでは、ある程度どの自治体でも共通になることをお伝えします。
せっかく忙しい中で訪れた窓口なのに、忘れ物があったために手続きができなかったという事がないためにも事前の問い合わせをお勧めします。
住民票を抜く転出届提出手続きの仕方
届出期間 | 転出予定日の14日前から |
届け先 | 現在、住民票のある市区町村の窓口 |
届出人 | 本人または世帯主、同一世帯の方。もしくは委任状を持った代理人
(役所によっては、郵送での手続きも可能です) |
必要書類 | ①窓口で手続きをする方の本人確認書類
(書類例:運転免許免許証・パスポート・個人番号カードなど) |
②返納するもの
個人番号カードまたは住民基本台帳カード(交付を受けている異動者の方全員分) 印鑑登録証 |
|
③その他、交付を受けている方
国民健康保険証、乳児医療証、後期高齢者医療被保険者証、介護保険証、年金手帳など |
|
その他 | 認印(転出届以外の手続きで必要になる場合があります) |
詳細はお住まいの市区町村によって異なるので、事前に窓口か電話で確認しておくと安心です。
児童手当に関する手続き
夫が単身で海外赴任し妻が子供と日本に残る場合は、子供を養育する妻に受給者の変更をする必要が出てきますので、受給者変更手続きを行います。
手続きは、現在お住まいの各自治体窓口で行ってください。
*窓口での手続きは、住民票と同様に本人か、委任状を持った代理人に限られており本人確認書類も必要です。
提出書類は以下の通りです。
- 国外転居届
- 児童手当・特例給付需給事由消滅届*(これまでの受給者である夫が記入)
- 児童手当・特例給付認定請求書(新たな受給者である妻が記入)
*自治体によっては海外転居届を提出すれば自動で手続きされる場合もあります。
詳しくは、自治体窓口にお問い合わせください。
もし受け取る口座を変更したい場合は、上記の他に「振込指定口座変更届」の提出が必要となります。
口座に関しては、受給者本人の普通口座に限られています。
また妻が夫の海外赴任に帯同し、子供が夫婦どちらかの日本国内の実家に残る場合などもあると思います。
その場合は、日本国内にて子供の生活の面倒を見る事になる親族など、例えば祖父母に預ける場合なら夫が祖父を「父母指定者」に指定すれば祖父に児童手当が支給されます。
「父母指定者」として手当を受給するためには、指定された人が児童の住所地の市区町村へ届出をする必要があります。
* 児童が単身で学校の寮に入っていて、父母指定者と別居しているような場合でも、手当が支給されます。
詳しくは、児童の住所地の市区町村へお問い合わせください。
引用:内閣府
番外編:夫の海外赴任(単身赴任)中に子供が生まれる場合の手続き
夫が単身海外赴任中に子供が生まれる場合、夫の住民票はすでに海外転出になっていると思います。
この場合の児童手当の受給者は、日本国内に住民票がある妻です。
注意点:出生日の翌日から起算して15日以内に児童手当の手続きをしてください。
お子さんの出生届を出すタイミングで一緒に手続きすると良いでしょう。
是非、海外赴任が決まったら、お近くの市町村に問い合わせ、会社の人事に相談、家族と充分相談してください!
自分と家族にとって一番良い選択を!
海外赴任が決まった場合、着任するまでの短い期間に済ますべきことが山のようにあります。
家族を帯同するかどうか、じっくりと話し合いたいですが時間がないのも現実です。
単身で赴任するか、家族を帯同するかを決めるポイントは以下の3点です。
- 配偶者の仕事の有無
- 赴任先の生活環境や治安
- 子供の年齢
これを踏まえてしっかり話し合い、帯同を決めたなら今度は住民票です。
家族全員分を抜くか、残すか。
住民票を抜いた場合は、健康保険や自治体からの補助が受けられなくなるので、手続きするならタイミングが大切です。
頻繁に一時帰国するかどうかでも選択、手続きがかわってくることでしょう。
住民票をどうするか、家族をどうするか、選択は人それぞれです。
自分にとって、家族にとって、最良最適な選択ができますように。
家族の皆様がこの海外赴任において、素敵な人生を送られますように!
こちらの記事でも、海外赴任の準備について書いてありますので、是非参考にしてみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!!
例えば、今までもらっていた子供手当は、どうなるのかしら?